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Brightness Of Moon

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2011年7月13日 (水)

星影のワルツを歌おう

ここでは雑記は書かない事にしていましたが特別に。

夜空三月様、三年と少しの間サイトお疲れ様でした。
もう、跡地になってしまったけど昔の色鉛筆で描いていた絵が好きでした。
とても温かみがあって、それで情熱がある作風で。

いらぬ事を言ったかなと思ったけど、それが答えなら終わりなのでしょう。
ギロケロ好きの最後の仲間を失ったようで、淋しくてまた酒で紛らわせました。

仕方が無いよね、若い貴方とオバサンの私とではいる水平線が違うのだから。

これからの活躍に影ながら応援いたします。

【紫陽花】【YES-NO】は我が家でリニュして出します。押し絵ありがとう。
では、異例ですが三月様の為にショートストーリーを書いて別れのご挨拶とさせていただきます。

【星影のワルツ】

夜空に星が一筋の線のように流れる。
流星群。星が雨のように流れ、暗闇を照らす。

「明日でありましたな、ギロロの遠征」
「そうだな。俺がいないうちに侵略しとけ」
「しないでありますよ」
「職務怠慢もいいところだ」

ケロロは星の光の中で笑う。『しないよ』

ギロロが帰ってくるまで、祈るの。
だから、多分何もしない。

「俺の帰還を信じられない?」
「信じたいよ。でも、沢山帰ってこられなかった人を知っているから」
「帰ってくる、必ず」

ケロロは目を見開く。軍人バカのギロロが戦争の中で帰ってくると言うのは皆無だった。戦うことが全てのような男が当たり前のように…

「信じられないか?」
「信じたいよ。でも、信じるのが怖い」

もし
もしも
信じて全てが壊れたら、もう立ち直れない気がして。
心に幾筋もある傷が、ばりんと割れて粉々になりそうで。

怖い。

「信じられないなら、俺がいなくなったら俺を忘れろ」
「・・・」
「出来るだろう?」

ケロロは必死に顔をしてギロロに抱きつく。涙が頬を伝っても気にせずに。

「バカ!!絶対に忘れてやらない!!流星群を見たらお前を思い出して泣き喚いてやる!!」
「だから、帰ってくるんだ」

ね、笑って。ギロロはケロロの涙を舌で舐め取る。
その笑みを絶やさぬように、必ずこの温もりの中に帰る。

「別れの挨拶なんてしないぞ。俺はお前の元へ帰る。そうしたら、流星群を見に行こう」

二人の止まった時間を動かすために。

ギロロが笑うから
ケロロも涙を手で拭いながら笑った。

「待っているでありますよ…ずっと

そして、ずっとがどれくらい続いただろう。
老年期に入ったケロロは一人で暮らしている。

あれからギロロは戻らない。

死んでいるだろうと言われたが、ケロロはその言葉を信じなかった。

「待っているでありますよ…

今宵は流星群が流れる夜。そして自分の寿命もつきるだろう。
自分の余命は半年。調度宣告から半年が過ぎた。

「ギロロは嘘をつかない。我輩も信じたよ…

きっと、きっと会える。そうしたら二人の空白の時間を埋め尽くすぐらいの

恋をしようね、ギロロ。

END

2011年7月 8日 (金)

ないしょのKiss

更新が遅れてすいませんでした。
で、今日は別館に三作ほど置いてみました。ここに載せるほど長い話ではなかったので。

では旧作品ですがどうぞ

宇宙人街のディスカウントストアーで携帯を見ていた時のことだった。

「これかっこいい」

我輩が一目ぼれした機種はちと高めだけど、全宇宙対応型らしいし。ケロンで売られているものより数段お洒落だった。星型の携帯なんて誰も持っていなさそうで凄く欲しい。

でも…

「店員さん、本当に赤しか在庫ないんでありますか?

「モック(ディスプレイ用携帯)のタイプしか置いてないんですよ。取り寄せるにもここはペコポンの宇宙人街なんで時間がかかりますよ」

「ぬーこの辺境惑星め」

星型の赤い携帯なんて、あの堅物とラブラブだと公表しているみたいで…

ら…ラブラブなんてありえないし!

あんな軍人バカなんて目じゃないから!

「大体ね、我輩はもっとかっこいい人が好きなんであります!

「お客さん。何ぶつくさ言ってるんスか?この品は来週に新デザインに切り替えるんで本部に返しますよ。買うならお早めに」

リニューアル前のレア物、来週には店頭から消えるレアな…レアという言葉が頭の中をぐるぐる回ってついつい『買う!』と手を上げてしまった。

買ってしまったラブラブ携帯を…もう恥ずかしくて携帯できない。このままガンプラの箱の中に閉まって…ああ、携帯だからお蔵入りできないんだ…

「全てはあのバカが赤色なのが悪い、星といったら黄色でしょ」

「誰がバカだ。そして黄色野郎が何だって?

後ろから聞きなれた低音に声をかけられ驚いて振り向いた。

ギロロ、お前は地獄耳で超鈍感で最悪。独り言なんだからヌルーしておいてよ。

もーこんな奴と、で…デートしているなんて我輩の不覚。

それも我輩が誘ったなんてトチ狂いすぎ!

「買い物すんだ?

「ああ。帰るか」

色気ない。ディスカウントストアーで一緒に見て回るだけのデートなんてしょぼい。

我輩の計画なんだけど…でもしょぼく見えるのは気分を出さない赤ダルマのせいであります!

だってもうお開きなんだし、短すぎるじゃん!

屋上の駐車場を結ぶ狭いエレベーターに二人で乗った。

はぁ、次に二人きりになるのはいつのことやら…って!そんな事思ってないし!

こんな奴、別になんとも思ってないし!

「ケロロ、顔が赤いぞ」

「なんでもないし!ギロロの方が赤いじゃん」

「レジ待ちのカップルが破廉恥な真似をしていたからだ」

へぇと言い返すのより早く、頬にチュッとキスされた。もうどうして良いのか分からずに、でも慌てる姿を見せたくなくなかった。

照れ屋のギロロのくせになんつー大胆なことを!そのギロロは悪びれもせずに言った。

「こういう風にキスし合っていて見ていて恥ずかしかったと言うことだ」

「へ…へぇぇ!そしたら…わ、我輩もしなくちゃ…」

「ああ、口に頼む」

そう言う顔がかっこよくて。

堅物の癖に、かませ犬のくせに。

お前なんか、お前なんか…大好き。

我輩はエレベーターのボタンをもっと上の階へ押して、その口にキスをした。ちょっとでも長くキスしていたかったから。

あの赤い星型携帯は使うたびに恥ずかしい代物で。でもちょっと幸せだった。いろいろと外野から言われたけど、当の本人が緑色の携帯電話を持たない限り墓穴にはならない。

しかしケロロは知らないでいた。

めったに使わないギロロの携帯電話は丸型の旧式モデルだが、色は緑色だと言うことを。

END

2011年7月 2日 (土)

超コネタ【愛の帰る場所】

整理整頓のつもりでブログを一つ開設したら二重苦になりまして。
ここ、木曜日から更新してませんね。すいません。別館で更新しているか、ぐったりしているかです。

早くも夏バテしています。夏は嫌いでね。

さてと、今回の更新は携帯ユーザー様向けの尺の短い話です。手抜きとは違う'(と、思う)短く仕上げたからいい話と勝手に思って。

では、どうぞ

【愛の帰る場所】

まだ新兵だった頃。
その腕はいつもまだ戦場に慣れていない俺を慰めた。

「ギロロ、ここにいる限り、怖いことは無いよ。我輩がギロロの眠りを守るよ。だからお休み、明日、もしまた怖くなったらここに帰っておいで」

その腕に抱かれて眠り、戦争と言う恐怖と戦いながら
夜になれば自分から腕を求めて寝袋に潜り込んだ。

そして、いつの間にか腕に抱かれなくても眠れるようになった。
その頃には顔に傷か付き、階級も上がっていた。

戦うことが全てだと思っていても

平和すぎる地球の、こんな蒸し暑い夜には眠れなくなる。
それを理由に…

ケロロの部屋に行くと、やっぱり蒸し暑い。
苦悶の表情で浅い眠りに付く姿をベッドに乗って正面から見ていると、黒い瞳が大きく開く。

「眠れないの?」
「眠れないんだ」

そう、じゃあおいで、と薄い敷布団を開いてギロロを招き入れる。ギロロはそのままケロロの腕にありつき目を閉じる。

「もう、怖いものなんてないでしょ?赤い悪魔さん」
「そうかも知れない。でも、ここが俺の帰る場所だ。それが誰かのものになったら…それが怖い…」

ケロロは呆れて「よく言うよ」と言うとギロロの額にキスを落とす。

「好きでもない野朗を抱きしめて?優しい言葉を吐いて?我輩ね、ギロロがたまたま男だったから男にそんな事しちゃってるけど、本当はそんな趣味ないんでありますケド」

そんな気持ち、大昔から知っているくせに。
ギロロの軍帽の端を齧って、恨めしそうな目で言う。

「それは同感だ。お前が女だったら今頃は俺の子の二人や三人は生ませていただろうな」
「おや、残念。我輩女だったら良かった、なんてね」

でも男だから戦場でギロロの恐怖を抱きしめられた。
そして、今もギロロの眠りの番人ができる。

「さて、ギロロが朝起きるまで守ってあげるから、お休み」
「…どうしてだろうな、もう足りなくなったんだ」

何に?と言う間もなくケロロは身体を仰向けに倒された。それに覆いかぶさったギロロの肩越しに暗い部屋の天井が見える。

「ギロロも我輩が好きなんでありますね」
「お前こそよく言う。今更…」
「だったら順序逆。デートしていちゃこらして、その次じゃん。ま…拘らないけど」

仕方ないなぁ、ギロロ、抱っこしてあげるからおいで。

ケロロは両腕を伸ばしてギロロを招き入れた。

身体を貪るギロロの頬を撫でてケロロは笑みを浮かべる。

「ケロロ?」
「ねぇ、我輩をぎゅっでして?」

ギロロはその言葉に答えて、ケロロの身を強く抱きしめる。
その温もりに安堵したような笑みを浮かべて、ケロロも抱き返す。

「ギロロもそうであるように、我輩もこの腕が帰る場所でありますよ…

そう、どんなに寄り道しても
この腕は【愛の帰る場所】

END

2011年6月29日 (水)

【故郷(ふるさと)】 後編

ケロロが意識を取り戻した所は布団部屋だった。
黴臭い布団に寝かされて、周りには番頭衆と社長がいる。

「我輩は…」
「何、疲れていたのだろう」
「すいません、社長さん。我輩、仕事に戻ります」
「いや、君は戻らなくていい」

ほら、まだ身体が辛いだろう?この薬を飲みなさい。
そう言われて差し出された杯に嫌な予感がする。

何処かの工場でコレラが流行ったとき、女工達全てを毒殺したとか。
我輩の病も多分移るから…この杯は…舌の先で味を確かめる。喉を焼かれるような痛みが全身に伝わった。

前なら飲んでいただろう。父母の為。お国の為にもなれないのなら。
でも今は、どうしても、どうしても野麦峠に行きたい。
彼が居る場所に、最後でいい、一度だけでも。

ケロロは膝を折り正座ををすると、杯を社長に返し、額を布団につけて土下座する。

「これだけは堪忍してください。足りないお金は工面します。何をやっても」

すると社長は、がらりと人を変え、ケロロの頭を掴むとぐりぐりと布団に力任せに押し付けた。

「結核の癖に何が出来るってんだ。今死ねば楽になれたのに。おい、番頭衆。こいつは何をやっても金を返すそうだ。身体で返してもらえ」

薬だって安いものじゃない。そう言って社長はいやらしい笑みを残して去っていった。

「結核もちで、男か。ま…見た目は悪くない。俺が最初だ」
「こんなひ弱な奴の病気なんぞかかるかよ。なぁ、大人しくするんだそ」

な…ケロロちゃん。

それから、襖を閉められた布団小屋から悲痛な悲鳴が何度も何度も響いていた。

そして…
ケロロは外の物置小屋に運ばれた。布団で寝かされ、食事が与えられるが、夜な夜な味をしめた番頭衆の玩具にされていた。

事が終って、ズボンをずりあげながら帰っていく番頭衆を遠い目で見る。そして扉を閉められると窓から月光がケロロの顔を照らす。

もう、我輩こんなにやつれたし、痩せこけちゃったし。
そして治らない病気だし。移る病気だから触れられない…

もう、無理かな。野麦峠までは…

ケロロがまた咳き込む。布団に幾重にもついた血にまた新しい血が付いていく。

歯を食いしばって嗚咽を堪える。
でも涙が止まらない。

そう、もう触れられない。あの温もりを感じることが出来ない。
そしてこんなに汚れた身体で、あの人を好きだなんて言えはしない。

どうして好きになったのかな。
こうなるのなら出会わなければ
…いや、やっぱりギロロに会いたい。
どんな形でも。

何時しか正月になっていた。飛騨まで帰る女工は会社の宴会の席に出ることなく出発する。ケロロは必死の思いで帰らない女工の着物を盗むと、女工に成りすまし野麦峠へ一人で歩いていった。

「一目見るだけでいい。そしたらね…」
雪に埋もれた笹達の間で眠りに付こう。

ケロロの歩く先々で椿の真紅の花びらのような血痕がついていく。雪は身体に叩きつけるように吹き、何度もうずくまりながら、でも最後の力を振り絞る。

「一目だけ…それでいい…」

ギロロは屋根裏部屋の小さな窓から何組ともなく来る女工衆を凝視していた。この中に蓑を身に纏った男が居たらそれが…。
しかし、それらしき人はいない。痺れをきらしたギロロは女工衆と爺婆が寝たのを見計らって、峠を下って行った。

ケロロがあの約束を忘れてしまっていても。
もし、この顔を見て逃げてしまうかも知れなくても。

一目だけでいい。あの月光に照らされた綺麗な姿を見られれば。
それで、待ち焦がれた日々が満たされる。

下っていくと、雪に埋もれるように蹲る女工が1人でいた。
女工衆は腰に紐を結び合うものだが、これは1人で…ギロロは先に行きたいがのたれ死なせる訳にも行かず、女工に声を掛ける。

「一人で飛騨までは無理だ。少し先に茶屋があるから、他の女工に混ぜてもらえ」
すると、その女工が顔を上げた。
雪の中、やつれた顔。随分細くなった手足。
でも黒い大きな瞳と、翡翠の身体は色あせることなく。

「ギロロ、我輩…帰ってきたよ」
「そうか。こんなになるまで苦労して」

ギロロはケロロを抱きかかえる。その温もりに時間が一年前に戻り涙が出そうなくらい嬉しいが、ケロロはバタバタと足をばたつかせる。
「こんなんじゃ、雪道を歩けないでありましょ!!我輩自分で…」
「煩い。こうさせていてくれ」

ぎゅっと片腕で身を抱き寄せられて、胸が熱い。
ぎっちりと抱きかかえられて、ギロロの顔をよく見ていると
目はつり目で顔に傷はあるが、中々の男前だと思ってケロロは微笑んだ。

そして、野麦峠まで着いた。
屋根裏部屋に通されて、そば湯を口に含まされた。
「ろくなものを食べていないんだろう?いきなり食べると腹を壊すから、これで」
「ありがとね」
「ここは火の気がないんだ。寒くないか?」
「暖かいよ…」

ああ、報われた。

ケロロは幸せそうに微笑んだ。

後は
後は
ギロロに知られないように
ここを離れるだけ。

「ギロロ、知ってる?」
「何だ?」
「飛騨では正月の2日に神社で着物の大売出しをするんでありますよ。その時に10円札が飛ぶように行き来するから『猪が飛ぶ』と言うんでありますよ」
「お前も買ったことがあるのか?」
「ないけど、女の子達しかいないでありますから」

このまま血を吐かないで、ここを出ないと。
ケロロは精一杯笑って飛騨の話や工場の話をした。

「ギロロ、我輩眠くなっちゃった」
「ああ」
「お休み…」

これでいい。ギロロが寝るときを見計らえば。
しかし、ギロロはケロロの布団に入り込んだ。

「何が暖かいだ。こんなに身体を冷やして」
「やっ…ちょっと離れて。我輩は…」
「こんなに凍えて。女工の着物を着て、何があったんだ」

ケロロは言葉を出そうとして、とうとう激しく咳き込んでしまう。
布団にもケロロの顔一面にも、ギロロの顔にも血が飛び散った。

「ごめんなさい…我輩は」
ギロロは涙を零しそうなケロロの身を血まみれのまま強く抱きしめる。

「もう、いい。守ってやるから。離さないでいるから」
「この病気は移るし…我輩は何にも出来ない奴なんだよ」
「いいから。傍にいてくれ」

今まで心に仕舞いこんでいた悲しみが洪水のように溢れ出す。
工場での辛い日々
毒を飲まされそうになった事
番頭衆に受けた暴行

ケロロは涙ながらに話す。
それをギロロは手ぬぐいでケロロの顔を拭きながら聞いていた。

「もう、ギロロに触ってもらう資格なんて」
「資格の問題じゃない。お前は俺が欲しいか?」

本当は望んでいた事。
両腕が勝手にギロロの首に絡みつく。

「欲しいよ…ずっと欲しかった」
「そうか」

二人は肌寒い屋根裏部屋の中、静かにもつれ合った。

そして眠ってしまったケロロみてギロロは考える。
もう長くはないだろう。それなら故郷で眠ったほうがケロロの為。クマ笹で生まれた何も無い自分とは違う。

ケロロには故郷がある。
人が何処へ旅たっても忘れぬことの無い地。

ギロロは雪支度と夏場に使っていた背負う道具を準備してケロロの頬を撫でる。

「何…」
「飛騨に行く。付いて来い」
「わ…我輩は、ここで十分…」
「帰りたくは無いのか?」

するとケロロは小さく首を横に振った。

いい思い出がなかろうと。
生まれた地は忘れない。

「じゃあ、行くぞ」

背負う道具にケロロを紐でくくりつけるとギロロはそれを背負って、野麦峠の先、飛騨を目指す。
どんどん雪が深くなる道をギロロは雪を踏み固めながら歩いていた。

「きつくないか?」
「平気」

二人は一年を埋め合うかのように話をしながら歩いた。

「へー鬼のような顔でありますか。ギロロは結構男前でありますよ」
「お前だけだと思うぞ。お前も芸者に売られなくて良かったな」
「一応、男でありますから」
「女だったら大変なことになっていただろ」

くすくすと笑いあう。

しかし、最後はあっけなく訪れた。

「ギロロ!!飛騨が見える!!」
ここはまだ飛騨から三里はあろうかと言うところで。

「まだ、飛騨じゃない!!ケロロ!!しっかりしろ!!」
「飛騨が…飛騨が…」

ギロロは急いでケロロを下ろすと自分の蓑を敷布にしてケロロの身を横だえさせた。

「ギロロ…」
「話すな。少し休むんだ」
「ギロロ…飛騨で暮らそう」
「ケロロ?」
「我輩、工場で頑張るから…飛騨で…一緒に…」

最後に…大好き…とだけ言い残してケロロは冷たい屍になった。
ギロロはそれを背負って、飛騨を目指す。

「お前の死場はここじゃない」

そして飛騨の光が見えてきた。
生家に行くが、当たり前のように門前払いを食らった。200円で売ったのに一年足らずで死なれて、お陰で娘を売ったとか。

「犬畜生だな。お前の親は。もうあんな奴らに義理立てする必要は無い」

やっと腰を落ち着かせたのは神社の裏手。ケロロを下ろして冷たくなってしまった身体を温めるようにギロロが後ろから抱きつく。
「お前の故郷だ。落ち着いたか?」

後は埋葬するだけだがギロロはどうしても冷たい土の下にケロロを埋めることが出来なかった。この姿が目の前からいなくなる事に恐怖に似た感情が心に渦巻く。

だから宝物を守るようにケロロを抱きしめている。
どんどん飛騨の寒さで凍り付いてきていても。

そして正月2日、ケロロの言っていた『猪が走る』着物の大売出しの日。ギロロは一枚だけ持っていた10円札を持って女達の群がる神社に足を運んだ。

そして丁稚に言う
「男物はあるか?」
「へぇ。隅に少し」

見てみると数着だけ男物があった。その中の絣の着物を手に取ると、丁稚に言う。
「幾らだ?」
「20円でいかがでございましょう」
「ふっかけているな。どうせ男物なんぞ売れないだろう。10円でどうだ?」

丁稚は親方にひそひそと話をする。どうせいい類の話じゃないのは分かるが、手に入ればどうでもいい話。

「仕方がございませんな。10円でお売りいたしましょう」
「すまないな。手持ちがこれしかなくて」
ギロロは鬼と言われる笑みを零すと、着物を持ち去った。周りは震え上がり、この後の商売に影響が出たとか。

ギロロは急いでケロロの元に向かう。
抱きしめて存在を確認すると、ケロロの血まみれの着物を脱がせた。そして、買ったばかりの着物を着付けて帯を締める。

「よく似合っている」
そしてまた抱きしめる。始めてあったときも氷のように冷たかった。

「なあ…ケロロ」

守ってやれなかったから
せめて離さない。傍にい続ける。
お前と飛騨に住む事が出来なかったから

俺は、この地で、お前と…ずっと。

ケロロとギロロの身体に雪が降り積もる。
それでもギロロはぴくりとも動かずにケロロを抱きしめ続けて…

飛騨の春

神社の裏に名前のない二つの小さな石塚が立てられた。

そして

時は流れて、その地が名もなき場所になろうとも、石塚は立ち続ける。
一年で一生の恋をした二人の石塚は、今でも。

志を果たして、
いつの日にか帰らん
山はあおきふるさと
水は清き、ふるさと。

2011年6月28日 (火)

【故郷(ふるさと)】 中編

如何にいます 父母

つつがなしや 友垣

雨に風につけても

思い出ずる ふるさと

ここの朝は釜に水を張り、ボイラーで湯を沸かすことから始まる。
水を汲む重労働、ボイラーを動かす重労働が終ってヘトヘトの身で女工の達の飯炊きをする。
飯を炊く合い間に冷や飯と泥のように濁った味噌汁で朝餉を済ませて、後は独楽鼠のように
糸を引く女工達の足元に這い蹲る。糸を引いた後に出る蚕の蛹を拾うために。
工場の中は実に蒸し暑く、そして生臭い。蚕蛾の蛹から糸を引いているせいだ。この蛹が鼻が
折れるくらいに臭い。

元から身体の弱いケロロは何度も倒れそうになるが自分で自分の頬を張って耐えていた。

そして就業。またケロロは飯炊き。食べるものも冷や飯に味噌汁。
「まぁ、白いおまんまなんて飛騨じゃ食べられないから贅沢でありますよ」
彼の生まれ故郷の飛騨では、良くて麦飯、普通は稗と粟がご飯だった。

…ギロロも麦飯なんだろうな。少しずつここのお米を拝借してお正月になるころに一升貯めて持っていったら喜ぶだろうな…

心はもう野麦峠に向かっている自分にケロロは恥ずかしそうに顔を隠す。

「まだ夏にもなっていないのに。もぅ、我輩ったら」

扉の奥で飯はまだかと番頭の怒鳴り声が聞こえて、ケロロは急いで食事つくりに取り組くんだ。

野麦峠に遅い春がやってきた。
秘境の集落を回る行商人がちらほらと通り過ぎる。

その中に、どかりと縁側の席に座る、ヤクザもの。「酒を持ってこいと」ふてぶてしく言う。

婆は餅を焼いて、爺はついた餅を捏ねていた。
峠の茶屋に酒なんて貴重品は無い。

「ギロロや、頼まれてくれるかね」
「分かった」
ギロロは水瓶から湯飲みに水を汲むと、ヤクザものに差し出す。

「けっ、若い女はいねぇのかよ」
とヤクザものが湯のみを煽ると噴出した。

「水じゃねぇか!!」
「そうだ。去年、なけなしの酒を出したのに金を踏み倒した野朗にはこれで十分だ。
飲んだら消えろ。しらばっくれるなよ、客の面は一度見たら忘れないものでな」
「やる気かこの野朗!!」

ギロロはその言葉に目を金色にして口先だけで笑ってみせる。

「金がなければ身包みを剥ぐだけだな。後は笹に転がせばいい」
「俺を誰だと…」
「ふん。不細工なくりからもんもんだ。書き直してやろうか」

まるで鬼のようなギロロの雰囲気に、飲み込まれたヤクザものは財布からありったけの
金を差し出して逃げ去ってしまった。

婆も爺も「ギロロは便利でよい」と言う。
所詮、働き手として育てられ、今では用心棒の真似事までしている。

それを辛いと思わなくなったのは、一夜だけ温もりを与えたあいつが今でも心にいるから。

正月までの我慢。不思議だな
たった一夜、色事があった訳でもなく身を暖めただけなのに
この手に冷たいケロロの肌触りが心地よく残っている。

いっそ、迎えに行きたい。
でも、200円で買われたケロロの身請けなど出来なくて。

それが今では辛い。

麓の道にそっと囁く。

「苦しくないか?悲しくないか?ケロロ…」

そして季節は夏を迎える。
工場の曇ったガラスから青い空と絵に出てくるような美しい雲が見えた。ケロロは這いつくばっていたが頭だけ上を上げて空を見る。
「ギロロ、見ているかな?」
不思議、一日一日と経つごとにギロロが恋しくなる。あの温もりが欲しくなる。
すぐに番頭に見つかり怒鳴られたけど、ケロロはちらちらと空を見ながら同じ空を見ていることを祈った。

背に二貫の氷を背負ってギロロは麓から山道を歩いていた。麓に行けばケロロに会えるかもしれないと淡い期待があったが、ギロロはケロロの奉公先を知らなかった。

でも、ここの何処かに…ギロロは氷を買って、背負いながら幾多にもある工場の窓を覗けるだけ覗いた。結局見つからなかったが。
本当に不思議だ…お前を好きだと思える自分が。ろくな生まれでない、戸籍も無い男が。でも、生まれて初めて欲しいのはお前なんだ。

青い空、雲が美しく絵を描く。それを見上げてギロロは優しく微笑む。

「ケロロ、お前はこの空を見ているか?」

そして秋がやってくる。
ケロロは早く正月にと心を躍らせていた。いつもの通りの蛹拾い。ケロロはその蛹がぼんやりと見えて不思議に思うと、肺が燃え尽きそうな痛みに襲われてその場に倒れこむ。

ごほっ…と吐き出すような咳をすると、大量の血を吐き出していた。

「嘘・・・・」

ケロロの視界が回りだし、そのまま闇に消えていった。

後編に続く

2011年6月27日 (月)

【故郷(ふるさと)】 前編

兎追いし かの山

小鮒釣りし かの川

夢は今もめぐりて

忘れがたき ふるさと

時は国が立ち上がろうとする頃。他国に遅れをとった我が国は『富国強兵』をスローガンに、男は兵役、女は生産と義務付けられていた。
人が人を操るのに、人を人とも思わなかったそんな時代。

山奥の秘境、貧しい農村「飛騨」から麓のを結ぶ唯一の道。その間の野麦峠と言われている場所があった。野麦とは、その一帯に自生しているクマ笹で、何故か凶作の年には麦のようなおしべをつける事から、そう呼ばれていた。

そこにある茶屋に、1人の男と老夫婦が住んでいた。
男の名前はギロロと言った。故郷はと言えば、この辺りに自生しているクマ笹の中。麓の紡績工場の女工が産み落とした、いることを許されなかった子供の末路。

そして彼には戸籍が無い。拾った夫婦が働き手として置いておくようにあだ名だけ付けてひっそりと隠してしまったのだ。

戸籍がなければ兵役検査は無い。
ある程度の年なのに兵役に付かないギロロは、白い目で見られるか、生み落とされた時に付いた顔を横切る傷のある、鋭い目から『鬼』と恐れられていた。

「ギロロや」
囲炉裏に当たっている老婆が呼ぶ。
「どうした?」
「もうそろそろ、女工衆が来るから薪を集めてきておくれ」
「わかった」

もう、そんな時期。
正月休みを飛騨で過ごした女工達は、幾里もの道を歩いて紡績工場まで向かう。紐でお互いを繋ぎあい、念仏を唱えながら道を行く。雪が腐るほど降るこの地帯では、山道から踏み外して下に落ちて死ぬ女工も少なくない。

「ギロロや」
「何だ?じいさん」
「薪を拾って、草餅を付いたら屋根裏にいろ」

その言葉にギロロはくすくす笑う。

「分かっている。女工たちが俺を見て茶屋で小便でもされたら困るからな。新工(こう書いてシンコと呼びます。初めて紡績工場で糸引きをする10歳そこいらの少女達です)なんて気絶するかもな」
「分かっていればいい」

そして女工達がやって来る。
屋根裏に隠れたギロロは唯一ある小窓から不思議な光景を見た。

赤い襦袢に綿入りの着物を着た、女工衆の中で、蓑をすっぽりと被った男が混じっていた。工場の人間でもなさそうで。ギロロは「今時は男でも糸引きをやるのか?」と思った。腕がよければ100円(当時の紙幣で、今だと結構高額)にもなる。ギロロは肌寒い屋根裏で隠しておいた紙巻煙草を吸っていた。

そして夜。
女工達は囲炉裏を囲むように眠っていた。ギロロはメシがまだだったので土間の釜から素手で麦飯を食っていると、音がするぐらいガタガタと震えている人がいた。蓑に必死にくるまり、囲炉裏から離れた裏戸の近くで震えている男が。

ギロロは一応客なのと、さっきから気になっていたので声をかける。

「こんな所では明日には氷になるぞ。少し待っていろ」

ギロロは大きなたらいに湯を張ると、男を呼んだ。ここに足をつけろと。男は足をつけると霜焼けが痛いのか顔を強張らせたが、すぐに笑みを浮かべる。

「ありがとう」
「いや…。お前は、男なのに女工の真似をするのか?」

ぱしゃりと水音が響くる男はお湯の温かさに喜んで足を動かす。

「我輩、兵役検査で乙級に(兵役検査には甲級と乙級がありまして、乙級だと兵役には向かないと判断されていました)になっちゃってね、仕方がないんでありますよ。身体が弱くて野良仕事も満足に出来ないし、だから工場で下働きに行くでありますよ」
「どうせ、前払いで幾らか親が金を受け取ったんだろ?」
「うん。200円」
「お前…そんな大金で子を売るなんて、お前の親は鬼だ」

俺の親なんて餓鬼かしょうもない淫乱女だろうけどな。

ギロロが吐き捨てて言うと、雪が止み月光が男の姿を浮かび上がらせた。
幸せそうな笑み。黒い大きな瞳も、翡翠の肌もとても綺麗で。自分が月光の陰に隠れている事に感謝したギロロだった。

「ありがとう。でもね、我輩さ、嫌じゃない。やっと親の役に立てたかなって。…うん、やっぱりありがとう」

こんなに優しくされると好きになりそう。そう言って照れる男に、ギロロを月影に隠れて手を握る。

「お前、綺麗だな。俺も好きになりそうだ」

じゃあ、年越し、またこの野麦峠を通って飛騨に帰るから、その時まで好きだったら、その時は…
まだ寒さで震えている男をギロロは、半天と自分の肌で包み寝かしつける。

「名前…なんて言うの?」
「ギロロ、お前は?」
「ケロロ、じゃあ約束。忘れないでね」
「お前こそ。身体に気をつけて、年越しにはここに来い」

ケロロはこくりと頷いて眠りの淵から落ちた。
翌朝には半天だけが残っていた。それをケロロは抱きしめる。

「生まれて初めて優しくされたよ、ギロロ…本当に好きになるかもしれない」

後編に続く

2011年6月25日 (土)

コネタ【夢で逢いましょう】

貴方と夢で会う方法?
写真を枕元に添えるとか。
あの人を思い出させる香りのアロマ?

どれもしっくり行かなくて、ケロロはペッドに入り暗い天井いっぱいにギロロを写す。
夢で出会えるように。ケロロは天井に手を伸ばし、そしてパタンと手はベッドに落ちた。静かに眠りの淵に落ちたのだ。

暫くして、ケロロの部屋のドアが開く。
一筋の光が部屋を照らし、ギロロが入ってくる。

「おい、最新の武器カタ…なんだ、眠っているのか」

ギロロは本棚の中からそれらしきものを見つけて静かに去ろうとした。が、ケロロが静かに自分を呼ぶので驚いた。

「すまん、起こしてしまったか?」
ギロロはケロロの寝顔を覗くと、目尻に涙を溜めていた。
「ケロロ」

そんな悲しい顔を見たくなくて、ギロロはケロロの手を両手で包み込んで、膝を突く。

…その夢に連れて行ってくれ…

ギロロは静かに目を閉じた。

場所はテレビの砂嵐のような世界。人々も石像のような色で、一列に歩いている。
「ハレルヤ」
「ハレルヤ」
と、唱えながら。
ケロロは直感した。ここは死につながる世界。この列から抜け出さないと。
しかし、人々はそれを許さない。抜け出そうとするケロロを妨害して天と神がいる場所を目指す。

「やだってば。我輩死んでいない」
「ハレルヤ」
「ハレルヤ」
「ちょっと退いてよ、我輩は…」
「ハレルヤ」
「ハレルヤ」

「いやだって!!ギロロ!!」

その時だった時空の隙間を銃でくりぬいたギロロが手を伸ばす。

「お前、死ぬ気か!!掴まれ!!」
「ギロロ!!」

ケロロは迷わずギロロの手を握り締めて砂嵐の亡者の列から抜け出した。
一息ついたケロロは、少し照れくさそうに笑う。
「ここは夢の中でありましょ?そこでさえ逢うなんてとんだ腐れ縁」
本当は心に隠して。
どんなに気持ちが洪水のように溢れ出しても。
ギロロ、お前優しいから我輩の気持ちを知ったら凄く困らせる。そうなりたくなくて。だからいつ、いつまでも【友達】

少し思考に落ちて、複雑な顔をしているケロロに、ギロロは照れることなく答える。

「お前が泣いていたから、お前の夢に入り込んだ。上手くいくものだな」
「・・・」
「俺のケロロは、泣いている姿も可愛いが、笑顔が一番いい」
「そんな事言わないでよ。我輩は…」

さて、どうせ夢の中。何処かにいこうかとケロロの手を引く、ギロロは強い力で引っ張られてとすんと元の所へ。

「ケロロ?」
「何処にも行かない。ここで一緒にいたい。ねぇ」

我輩は…我輩は…
「ギロロが好きだよ。友達じゃなく」

これは夢、だから許してください。自分を欺かないでいる事を。

すると、ケロロの両手首を握り締めて仰向けに押し倒す赤い腕。ケロロは驚いてギロロの瞳を見つめる。きつい目が何処か淋しげだった。

「俺のこと好きなんだろう?」
「…そうだよ」
「じゃあ、許せるか?」

友達面して、お前を犯すことばかり考えていた醜い俺を…

「答えろ」
軽くキスをされてケロロの顔に朱が入る。
我輩はギロロを困らせたくなかった。それがギロロを困らせていたのだとしたら。
自分と寝たいって「好き」って事だよね。

心を覆う多幸感に歌を歌うように言う。

「本当はさ、告白し合って、沢山喋って愛を語らって、キスしたりハグしたりしてさ、最後にえっちが理想系だけど、誰が決めたわけでもないし。いいでありますよ」

おいで、ギロロ。

ギロロはケロロに襲い掛かった。
餌を食べる野獣そのものの激しい愛撫の中、ケロロはギロロの耳元に囁く。

「愛しているの?心も身体も」
「愛している。ずっと前から」

ああ、もういう事はない。
自分の全てを捧げて本当に欲しかったものを大切に咀嚼する。

…貴方に、愛されたかった…

朝が来て、ケロロは目覚める。
「凄くいい夢だったような」

そう、夢は夢。朝の光が辺りを照らせばサラサラと砂になって消えてしまうもの。ケロロは起き上がって下に向かうと、顔を洗った。

「せめて希望と言う夢だったら見ても楽しいのに、寝ているときの夢じゃ夜伽話にもなりはしない」
ケロロはまだ夢の端っこをもっているようだ。それも消えてしまうけど。

ギロロは、自分がケロロの手を握って眠っていたのに驚いて、そのままテントまで戻った。ケロロの手の温もりが何かとリンクして、恥じ入りたくなる。
「何かとんでもない事をしたような」

ギロロの夢も朝日を浴びてサラサラと消えていく。
しかし、ギロロはある確信を持った。

焚き火に火をともしてやかんを置く。その中に入れた水が沸くまでギロロは燃える炎を見ながら自嘲する。

「たとえ、霞の中でも愛せればいい。」
現実の世界では何も語れない自分をあざ笑う。
ケロロが自分に寄せる笑顔を曇らせたくない、それだけで。

そして夜はやってくる。
また喧嘩していつもの何も変わらなかった日常。
ケロロはまた、天井いっぱいにギロロを写して眠りに付く。
そして
その頃合を見計らってギロロがドアを開ける。

またケロロの手を握って眠りに付く。

今度はどんな物語が紡がれるのやら。
しかし、揺るぎないのは二人が愛し合っていること。
夢の中でしか愛し合えない二人が現実で手を取り合うのはまだまだ先な様子。

だから今は

夢で逢いましょう
夢で逢いましょう

君と僕の…

END

2011年6月23日 (木)

改訂版【嘘つきだぁれ?】

昔に書いた話です。
その見も蓋もなさに封印していましたが、全て書き換えて復活です。

では、どうぞ

【嘘つきだぁれ?】

一夜だけの女に金とチップを手渡すと、チップを丁寧に返された。
「また来てくださいませ…だからチップはいらないわ」
「そうか、ではまた来させてもらおう」
「きっとよ…約束よ」

俺は女を見ることなく背中越しに手を振って娼館を出た。

何と言う、馬鹿馬鹿しい喜劇。
あの女があいつに少し似ていただけで。
でも抱けば別人なのを知っていて。
馬鹿な俺は娼婦を抱いて、嘘をつく。

「二度はない。お前はあいつじゃないから」

少し前だった、ケロロが嬉しそうに「彼女が出来た」と言ってきた。
心に突き刺さる痛み、それは刃で刺されたようだった。
なんて事は無い、俺はケロロが好きだ。ただずっと言えなかった。
気持ちを伝えもしなかったのに、彼女が出来たと喜ぶケロロを罵倒できるか?

「そうか、振られるなよ」
上手く笑えているだろうか。祝福しているように見えるだろうか「友達」として。

「大丈夫。なんかね、彼女とは結婚まで行きたいなと思っているでありますよ」

それくらい好きなの。

そう言って微笑むケロロに、両手を握り締めて、精一杯の笑みを作る。

「じゃあ、大切にしないとな」
「うん。でもね、ギロロと遊ぶ時間がなくなっちゃうでありますよ」
「気にするな。俺達は友達だろ?何時でも遊べるさ」
「う…うん」

全て嘘です。俺はそんな事考えていません。
ケロロ
お前が欲しくて、欲しくて仕方が無い。

俺のものにならないのなら
お前なんて朽ち果ててしまえばいい。

そんな
酷いことを考えているんだ…俺は…

彼女との約束だからと去っていったケロロを見送って、両手のちりりとした痛みを感じる。その掌を見ると、拳を握り締めて、締めすぎて、爪が刺さって血を流していた。

それから俺はこの心を消そうとした。
でも、街角で
軍の施設で
二人で良く行っていた喫茶店で

ケロロの気配を探してしまう。

どうする事も出来ず、軍の射撃場で銃を撃っていた。
こんな風に心に根付く恋心を射抜いて潰せたら。

銃の音に合わせて心が無になっていく。

「俺の弟は銃を打つマシンか?」
聞きなれた声に舌打ちをして振り向いた。

「ガルル。命中しているだろう?何が不満だ」
「そうだな。だが、マシンでも命中できる」

ガルルはギロロを一瞥してにやりと笑った。

「お前をマシンにしたり、夢遊病者にしている訳を自分で取り払え」
「言っている意味が分からん」
「嘘つき」

ガルルはそれだけ言うと射撃場から出て行った。ギロロはベンチに座り、深いため息を吐く。

「分かっている」
ただ
「もう遅かったみたいだ」

しかし運命とはどう回るか分からないもので。
ケロロは数ヵ月後、ギロロに泣きついた。

「ケロロ!!どうしたんだ!!」
「ふーらーれーたーぁぁ!!二股かけられてたぁ!!」
「はぁ?」

話を聞くと、その彼女は彼がいたのだが、結婚話が中々出てこないのにじれて、ケロロとも交際を始めたと言う。そして、その彼女は彼と婚約したとの事。

ギロロは頭をぼりぼり掻いて、ケロロの手を取る。
「失恋には酒がつき物だろ?付き合ってやるから」
「でも、ギロロって下戸だよね」
「ああ。次の日休んだら悪酔いだが、黙っておいてくれよ」

ケロロの涙がぴたりと止まり笑顔になる。
ギロロはそれだけで幸せになれる。

飲み屋へ行く道で、ケロロは少し顔を赤らめてギロロに言う。

「我輩達は友達だよね」

ギロロの心が揺れる。
友達だと言えば、ケロロは子供の頃と変わらぬ微笑で自分を見てくれる。
でも
友達であれば、また誰かに奪われる。

嘘をつく?つかない?

ギロロはケロロに笑いかける。

「友達より大切な特別な人。これが俺の答えだ」

もう嘘つきはやめて、どうなろうと素直に。
するとケロロはあたふたと慌て始めた。

「ごめん!!我輩、ギロロの気も知らないで誰かと付き合ったり、遊んだりして!!」
「そうだったか?忘れた」
「ギロロ…本当に優しいよね。優しくされて嬉しいはずなのに、なんだか」

ケロロの両頬から幾筋の涙が零れ落ちる。
それをハンカチで拭くギロロにケロロは言う。

「今、正直頭がぐちゃぐちゃで答え出せないけど。ギロロの気持ちにきっと答えを出すからね」

さ、飲みにいこうとケロロはギロロの手を握って歩き出した。

ケロロ。
俺が嘘つきだったのが悪かったんだ。
その思いを心に閉じ込めて。

もう、嘘はつかない。
消えない気持ちを、君へ捧げる。

END

2011年6月20日 (月)

コネタ「あいのうた」

話自体は短いです。エロネタを作ったものの、雑記サイトの更新も入れると書く時間もなく。週末に持ち込みそうです。でも、書けたら書きますね。

久しぶりの【歌詞+小話】です。どうぞ

【あいのうた】

久しぶりのケロン星。
二人で休暇願いを取って帰ったはいいが、家族にも会わず軍本部にも出向かず、質素なホテルの一室で喰らい合うような情事にふけっていた。

親友、幼馴染、上司と部下…それを全て捨ててしまったら
焼ききられるような情熱で愛し合う恋人同士。

やっと飢えを満たしたはいいが、今度は食欲がぐうぐうと悲鳴を上げる。

「何か食べにいくでありますよ」
「そうだな」

入ったのはただのレストラン。でも、異星人のバンドの生演奏があってとても賑やかだった。
ケロロはビールと地球産のトリッパ(牛の胃袋。形状から蜂の巣とも呼ばれています)のトマト煮。ギロロは…

「うわっ、何その悪魔っぽい色合い。食べられるんでありますか?」
「ただの坦々麺だろ。これが普通だ」
「普通ね、ちょっと味見させて」
「こらっ」

ケロロは奪ったれんげの中身を口に含んだ瞬間、火を噴いた。辛いなんてものじゃない、劇薬、猛毒…。ケロロはウェイターに頼んでピッチャーの水を飲み干した。

「殺す気か!!」
「お前が勝手に食ったんだろうが!!」

その時、ステージで歌っていたバンドの者達がケロロに声を掛けた。

「リクエストイカガデスカ?」
リクエスト…無論、無料ではない。こういうサービスも彼らの収入源。いらないという事は出来るがケロロはにやりと笑って金貨を手渡す。

そして流暢な異星の言葉でリクエストをするとギロロを指差して

「あの人に贈る歌」

と、言って微笑んだ。

それから
ギロロはバンドに取り囲まれて、タンバリンのリズムも軽やかに歌の集中砲火を受けた。最後には両腕を取られて踊らされる始末。

「ケロロ!!お前って奴は!!」
「我輩の気持ちだもん。受け取ってね」

ケロロはにっこりと笑ってビールを飲み干した。

帰り道
「お前は酒が入っていたからいいかも知れんが、死ぬかと思った。こんな恥ずかしい真似は二度とごめんだ」
「ごみんに。でも、あの歌…結構有名だから知ってるっしょ?」
「メロディはな。意味はしらん」

それを聞くと、ケロロはくるりとギロロの前に立った。

「意味、調べて?」

本気なような、冗談のような。しかし、少し酒で赤らんだ頬を両手で触る。熱い、情事の時の情熱にも似た熱。この全てが掌にある。それがたまらなく幸せに感じた。

「分かった。PCは苦手だかやっておいてやる」
俺へのプレゼントなんだろう?ギロロが笑うと、ケロロも笑みを浮かべる。

「そう。我輩の贈り物」

休暇が過ぎ、地球に戻ったギロロは慣れないパソコンに四苦八苦しながら検索している。あの歌は確かに有名だが、古い歌でもある。色々な星で訳されていて、あの陽気なバンドの者達が何処の星の人かは知らない。

そして、やっと見つけた歌詞にギロロはくすりと笑った。

【あいのうた】(作詞nori)

もし、運命なんてバカらしい迷信でも
貴方に出会えたのが運命なら感謝を

もし、奇跡と言うありえないものが
貴方をここに呼んでくれたのなら信じられる。

心に悲しみを抱いていても
嘆きの中で涙にくれていても

貴方がいる、だから、きっと明日は青空に。

貴方の愛があるから生きられる。
届いてていますか?

私の【あいのうた】

貴方に包まれているから笑顔でいられる。

届け私の【あいのうた】

ギロロはPCを閉じて煙草に火をつけた。そしてやっぱり笑ってしまう。
「お前らしい。屁理屈ばかり言う嘘つきな口を持つお前にはな」

正直者は身体だけ。不器用…それはお互い様だけど

「俺にはこんな真似は出来ないがな。今度帰ったらあの店であいつにリクエストをしてやろう」

さぁ何の歌にする?
それは、曲は違えど【あいのうた】

END

2011年6月18日 (土)

コネタ【羅針盤】(BLギロケロ)

えっと、雑記専門ブログが立ち上がりました。【風よ、あなたへ】です。で…内容は36のバイのバカ話や、日常話とギロケロ妄想も。

で、今回雑記専用サイトなのに小話乗せちゃいまして…まぁ、大したものではないので見てくれたら嬉しいです。こちらはこれから小話が専門になります。

では、コネタをどうぞ。

【羅針盤】

良く立ち寄るバー。名前は知らない。
知らなくていい。
宿り木に止まる鳥が木の名前を知らないのと同じ。

ギロロはストローで薄い桃色のカクテルを飲んでいた。実はノンアルコールカクテル。名前はシャーリーテンプル。
横の席にいるケロロはにやりと笑って言う。

「最初は名前といい見た目といい、似合わないと笑っていたけど。慣れるとギロロ=シャーリーテンプルでありますな」
「それは、ありがとう」
ギロロもくすくすと笑って煙草を一本取り出して火を付けた。

「お前は毎度それだが飽きないか?」
ケロロの飲んでいるカクテルはバラライカ、見た目は薄い水色で甘そうだが辛口のアルコールの高い代物。
「我輩さ、甘いものは好きだけど…酒で甘いのは苦手なんだよに」
「じゃなくて、色」
「色?」

偶には赤いカクテルを飲まないのか?紫煙の先でギロロが意味ありげに微笑む。それを見て熱くなる身体を感じながらケロロが挑発的ににやりと笑う。

「ブラッティマリーも美味しいけど、赤なら混ぜ物なんてしたくない。頭から齧って食べつくしたいな」
「今日はその気分?」
「それは何時でも。んーもう少し飲ませて。優しくされるより、激しくされたい気分。その景気づけにね」
「程々に…」
「分かってる。あ…ギロロ、羅針盤って覚えてる?」

ギロロは煙草を指で挟んだまま宙を見て、高校時代の一幕が脳裏を過ぎった。

「高等訓練所の話か?」
「そうそう、進路相談の時期で…」

二人の心が若くて幼かった時代に戻っていく。

「ギロロも軍希望?」
「ああ、そうだが。お前もか」
訓練所最後の夏休みまでもう少し、学校は進路の話で持ちきりだ。訓練所にいるからと言って全てが軍属になるわけではない。中には民間に行く者も大学に進学する者もいる。

「我輩は仕方が無いにしても、ギロロは軍に入ったら兄貴と比べられるよ。そういうの嫌そうじゃん」
「俺の進路はこれでいいんだ。あのバカと比べられても痛い腹なんてない」

それは嘘。
ただ、ケロロのいない世界が想像出来なくて、それがとても淋しい世界だと思ったから。そんな柔な考えで軍属になってはいけないのに、ギロロは第一希望に軍と書いてしまったのだ。後の希望は空欄のまま。

「ギロロ、屋上行こう」
「はぁ?進路指導の真っ最中だぞ」
「教官がいないから大丈夫。行こう」

空が青い。
ギロロはケロロに引っ張られるまま屋上に上がると、夏特有の青い空が天を覆い尽くしていた。
「で…屋上に来て何の用だ」
「ああ、我輩がお腹がすいただけ、一緒に食べよ」
ケロロが懐から出したのはクッキーの袋。ケロロは袋を破って一口頬張る。

「あげる」
「ありがとう」

ふぅとため息を吐いてクッキーを齧るギロロをケロロは横を向いて眺めていた。

「どうした?」
「ギロロさ、本当は軍属になりたくないんじゃないの?」
「どうしてそう思う」
「もし我輩の資質のことでそれに同情してくれているなら、そういうのいいから。だってさ」

ケロロは立ち上がって、ギロロの前で大きく両腕を伸ばす。

「本で読んだけど、人には運命も宿業もないんだって。あるのは羅針盤。自分の力で自分の生きる道を進む者なんだって、人は…我輩にはなかったけど、ギロロにはあるよ、必ず」

ギロロは泣きそうな顔で言うケロロに両手を伸ばす。「そんな事ないさ」
その両手の導くまま、ケロロはギロロの腕にすっぽり収まる。

「お前も持っているはず。見失ったら探しに行こう、二人で」
「ギロロ…我輩は…」
「だから、お願いだから1人で嘆かないで欲しい。もしあるのならお前の運命に俺を道連れにして欲しい」

どちらからともなく交わした生まれて最初のキスは涙の味がした。

それから
時は流れて
名も知らないバーに二人でいる。

「ギロロ、お前が思う道を歩いている?」
「勿論、お前は?」
「我輩、結構幸せ」

二人はくすくすと笑いあう。若くて、幼かった自分達。でも、想い合う心は本物だった。今でも心を繋ぎ合わせているように。

「ねぇ、我輩がレジスタンスになったらお前も来る?」
まーお前は模範的軍人だから、そんな真似できないか。兄貴の顔にドロを塗ることになるしーとケロロがペラペラと喋っていると意外な答えが返ってきた。

「お前がそこでナイフを取るのなら、俺は銃を持って戦うまで」
…道連れにしてくれと言ったじゃないか…

ギロロは当たり前のように言う。そしてケロロの頬を撫でて楽しそうに笑う。
「レジスタンスという事は軍を潰すという事か。実に有意義だ」
「何いっちゃってるの?自分!!」
ケロロが顔を赤くしてまくし立てる。死罪だとか、ケロン星にいられなくなるとか、でもギロロは何処吹く風で、もう一本煙草に火をつけた。

「俺はお前がいればいい。軍を倒す?大歓迎だ。もうお前は本当に自由になれるのだから。死刑だ、追放だなんて小さなこと」
「ギロロ…やだよ、我輩なんかの…」
「なんかじゃない。と…言う架空の話だろ?喜んで乗ってやる。それは俺が自分の羅針盤を操ってやる事。気にしなくて結構」

今夜、このまま激しくされたら正気でいられないかも知れない。頬が熱い、身体が、心が…ケロロは赤い顔を軍帽の端で隠して言う。

「最後の一杯、飲んだら行こうか」
「ああ。待ちくたびれたぞ。これ以上待たせたら」

今ここで喰らうぞ。と、囁かれてケロロの顔から火が出るくらいに赤く染まる。ケロロはテーブルの隅でグラスをステアしているバーテンを見たが、彼は『私は聞いていません』と軽くウィンクをして、作業に没頭した。

ケロロはバーテンを呼ぶとこう言った。
「ズブロッカをダブルで。ストレートでお願い。ライムと塩も」
「かしこまりました」

今日は酔わないと、自分を抑えきれない。
終らない恋を約束しそうで
永久の愛を誓ってしまいそうで。

ああ、もう頭がぐちゃぐちゃでギロロを見ると、優しく微笑んでいた。

…いいのかな、もう、この人が最後の人で…なんて考えているけど答えは出ている。この人が最初で最後の恋人となんだと。

羅針盤はケロロの手にもきちんとあった。
それを操って不器用ながらギロロと共にいる。

そして、貴方の手にも羅針盤は納まっているはず…きっと。

END

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